「日本一小さな町の写真館」

南アルプスの麓に広がる山梨県早川町は、「町」としては日本でもっとも人口が少ない(平成28年8月1日現在1,130人)。広大な面積の約96%を森林に覆われ、人々は川のほとりや山の斜面に点在する集落で暮らす。外部と通じる道は、早川渓谷に沿って続く県道37号線のみ。しかもその道は南アルプスの玄関口・奈良田で行き止まりだ。山梨県を襲った2014年の記録的大雪では、町全域が数日間にわたって孤立。大きなニュースとなった。

しかしその奥まった環境ゆえ、町には独自の文化や風習が今も数多く残る。そして人々は厳しい自然に時には立ち向かい、またある時には恵みを受けながら、たくましく暮らしている。過疎化が長年の課題として横たわる一方、地下ではリニア中央新幹線の工事が始まり、静かな町も新しい時代を迎えつつある。 導かれるようにこの地との縁が生まれ、4年間にわたってあらゆる出来事や風景を取材。さらに町民ひとりひとりのポートレートを撮影する「はやかわ移動写真館プロジェクト」により、約800人の町民を撮影した。

■2016年9月に平凡社より写真集を発刊。同年11月8日~21日に新宿ニコンサロンにて写真展を開催。

「感應の霊峰 七面山」

山梨県、南アルプスの南端にそびえる標高1982mの七面山。古来より山岳信仰の対象で、山頂付近の一の池には天女が宿るとされてきた。永仁5年(1297)、日蓮聖人の高弟・日朗上人が、亡き師の願いを受けて一の池のほとりに天女を祀った。それを起源とする敬慎院には神仏習合が色濃く残り、今日も僧侶たちが天女へ祈りを捧げる。

参道入口と敬慎院の標高差はおよそ1400m。車道やロープウェイはなく、深い森の中をひたすら登らねばならない。それでも多くの人々が想い・願い・祈り・悩みを抱え、歩を進める。2010年春から敬慎院へ登り続けているが、山の霊気、風の匂い、東の空から昇る朝日と、暗闇から浮かび上がる富士山、森羅万象が自分の五感を研ぎ澄ましてくれる。何より敬慎院を取り巻く人々からは、失われつつある日本人の心が見えてくる。

敬慎院の扁額には「感應」の二文字が刻まれている。心への感応を頼りに、山の自然や人々へ静かにレンズを向けた。

■2012年5月22日~5月31日にコニカミノルタプラザにて写真展を開催。2013年1月に平凡社より写真集を発刊。

「Beijingscape」

北京では五輪開催を契機に空前の大開発が行われた。しかし悠久の時が流れるこの町そのものは、そう急激に変わるものではない。変わっていく景観と変わらない風土。五輪前年の2007年から北京へ足繁く通い、両者が交差するポイントを「門」に見つけた。巨大な碁盤の目には無数の、そしてさまざまな貌の門が、街と人とを隔てていた。

■2010年10月29日~11月11日にエプサイトギャラリーにて写真展を開催。玄光社ムック「カメラ・ライフ Vol.11」にて特集。

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